現在ペット業界では新たな需要に対応する次の時代のスキル・サービスとして「ペットの介護士」が脚光をあびています。動物の「介護」を考える方々は確実に増えています。
ペットの介護の資格をお持ちの方にお勉強したきっかけをお聞きすると、意外に多いのが「自分の愛犬(愛猫)が最期に要介護になった時、何をしてあげることも出来ずにあとで後悔したから」というお返事。ペットの医療も介護もこれだけ進化してくると、色々と理解するのが難しくなってくるのは当然、専門家の説明には難解な言葉も含まれてきます。理解ができないと自分の対応の仕方も曖昧になってしまい不安が残ります。やっぱり自分の家族の一員のことだから、しっかり治療やケアを理解したい。そう思う人が増えたのも当然なのかもしれません。
ペットの介護サービスをしていると言うと、非常に難解な勉強を経て高度な介護医療を実践している、というイメージを持つかたが多いです。さぞかしお勉強が大変だったでしょうとよくきかれるのですが、、、意外にペット介護の「現場」とはそういうものではありません。もちろん看護介護の基本知識は身につけますからお勉強はしていますし新しい知識をたくわえる努力もしています。でも実際の現場で本当に必要とされるものはそういった「知識」とはまた別のものであるというのが実感です。
いつも介護士を目指す方々に向けたセミナーの場ではお話しすることなのですが、私たちペットの介護士がお客様の家に伺い「すべき」ことは何かと考えた時、その答えは「適切な介助介護」でも「正しい介護方法の伝授」でもなく、「その飼主さんの『望んでいらっしゃることを』精一杯お手伝いさせて頂く」という言葉に尽きると思います。なんだかイイ加減な言葉に聞こえてしまうかもしれませんが、でもそれが全てであると思うのです。
一般のペット愛好家は、ご自分の愛犬や愛猫が「要介護」になったとき、すぐに介護士を呼ぼうとは考えません。まずは自分の力でなんとか介護をしようと様々な試みをし、自分なりの、その子にあった介護方法を編み出されて実践しているものです。膀胱をおしてオシッコを出してあげるためのその1つの動作でさえ飼主さんによってスタイルは千差万別であり、愛犬愛猫はその介護介助に「慣れて」います。
たとえそれが多少乱暴であるように見えたり、多少他の方法より手間がかかるように見えたとしても、飼主さんが努力の末に確立してきて愛犬愛猫もすっかり慣れているその介助方法を否定することはできません。もちろんあきらかに何らかの負担が生じている場合や犬猫によくないと思われる場合には多少のアドバイスやご提案はしますが、この場合「何が正しいか」は実は関係がなく「飼主さんは何をして欲しくて介護士を呼んだのか」を汲み取る努力こそが必要です。そしてその際に「話をきいてほしい」という望みも多いということも忘れてはなりません。
つまりペット介護士は、初めてのお客様の元でペットの介護をする際、その飼主様から「すべきこと」を学び教わるのです。
その上で問われたら、望まれたら、自分の知りうる限りの知識や経験をお伝えし、少しでもお役に立てればと願うのです。
寝たきりワンコのお尻の下の垂れ流しになったウンチやオシッコを始末し、膀胱をおしてオシッコの介助をし、少しでも動かして大丈夫な子は外に連れ出しお散歩の気分を味合わせてあげ、汚れた身体をふいてあげ、ご飯を口まで運んであげ、、、、
介護の現場に行ったからといって私達が何か特別な高度な技術を駆使しているわけではありません。
しかしその地味な作業の中で「飼主様のご要望にお応えし満足していただく」ことが、私たちペット介護プロフェッショナルの誇りなのです。
貴方の近くに、高齢のワンちゃんネコちゃんの介護で大変そうな友人はいらっしゃいませんか?
「ああすると良いわよ」「こうすれば良いのよ」とご自分の経験で色々なアドバイスをするのもよいですが、介護の状況は千差万別。その方にはその方の悩みが必ずあるはずです。まずはその方の気持ちになってみて「何か自分にしてあげられることがあるかな」と考えてみたら、、少し言葉のかけかたも違ってくるかもしれません。