先日、中国の動物園でライオンと偽り「チベタンマスティフ」を展示していた、というニュースが話題になりました。ワンと吠えて発覚したという冗談の様な話ですが、産まれて初めてライオンを見る、という方には分からない?ものなのかもしれませんね。
ではそのライオンにさせられていた「チベタンマスティフ」という犬はどんなものなのか、、と多くの方が面白半分にネットなどで調べてみたようですが、その結果、素朴な疑問に突き当たったようです。
あくまで「噂」に過ぎないような怪しいサイトには熊の様に大きくて非常に獰猛で恐ろしげな「チベタンマスティフ」の写真が掲載されているのに、様々な犬に関する公式サイトに掲載されている「チベタンマスティフ」はまるで別の犬のように大人しそうに見える、また書かれているサイズも公式のサイトのほうが随分と控えめで、とてもライオンと言える様なものではないではないか、、。
今日はこの微妙な「違い」についてのお話です。
そもそも「犬種標準/ドッグスタンダード」とは何かというと、これは全ての犬種に対して人間が「一応」決めた「規格」のようなものです。ある犬種のブリーダーになってその犬の血統を残して行く場合の「理想」であり「努力目標」となるものなんですね。例えば自分の犬をドッグショーに出そうと思ったら犬のサイズや色などがきちんと「犬種標準」の範囲内に治まっていないといけません。「規格外」の犬はショーに出陳する事ができないわけです。
でも犬というのはショーに出すためだけに存在するわけではありませんし、そもそも最初に「犬」ありきで、長い犬の歴史の中で「犬種標準」なんていうものは人間の都合で「後付け」されたものでしかありません。世界中の多くの地域の多くの犬たちは「犬種標準」なんてものとは無縁に人々の暮らしに密着し、ブリーディングを繰り返し、進化を続けているわけです。
つまり、ドッグショーのための「チベタンマスティフ」と本当にチベットで土着犬として現在も生きている「チベタンマスティフ」には大きな違いがあり、そのどちらもが「チベタンマスティフ」であるということです。
そもそも狼や豹から人間や家畜を守るためのガードドッグとして大切にされてきた「チベタンマスティフ」ですから、実際に自分のガードドッグとして飼育する際にはもちろん大きくて強いに越した事はないわけです。現在は闘犬としてももてはやされており、これまた大きくて獰猛な方が好まれるに決まっています。犬種標準では体高が66cmと決まっている、、なんてことはそういう現場には全く関係ないわけです。
このように地域に密着して長年進化を続けその地の犬として培われて来た犬種を「地犬」と呼びますが、たとえば日本の土佐犬などにも同じ事がいえます。闘犬として今でも活躍している純粋な土佐犬には今現在も厳密な「サイズ」の指定はなく、犬の大きさによって取り組みが決められています。そういうものなのです。
たとえば人間に「人種標準」というものを作ろうと思ったら、、、サイズや毛色など、相当な「幅」をもたせないといけないですよね?そうでないと多くの人間が「規格外」となってしまいます。規格ありきではなく、現物ありきで柔軟に考えた方が、色々な意味で幸せな気がしませんか?