少し春の気配がし、花粉が気になり始める時期、ペットの専門スクールも学期末の試験シーズンを迎えます。全国のスクールで、ペットトリマーやドッグトレーナーの卵たちが検定試験に臨みます。これはつい先日、とある大きなペットの専門学校に、トリマーの実技試験の試験官として出向いた時のお話。
犬のトリミングには様々なカット技法がありますが、その技法の数々を一番多く含み、バランス感覚も試され大変難しいのが、プードルのトリミングです。トリマーさんが勉強の多くをプードルで行なうのはこのためなんです。最近はテディベアカットなんてのが流行ったおかげで、トリマーさんの課題は増えちゃいました。
トリマーのライセンス取得の為の実技試験も、基本はこのプードルで行なわれます。(もっと上級になって犬種別に極めて行く時はまた別です)
つまり、試験会場にはプードルがウジャウジャ、、。
専門スクールにはスクールの悩みがあります。毎回試験の度に生徒の数だけ生きたプードルを用意しなければなりません。自分自身でプードルを飼育している生徒は自分の犬で試験に臨んだりもしますが、大抵は「借り物」の犬で試験を受ける事になります。この時に、どの犬に「当たる」かが大問題。
愛犬家の家から借りて来られたワンコたちは、皆良い子に試験に臨んでいます。試験をするトリミング台の脇には、「古賀ゴン太」とか「黒川モズク」とか「児玉ショコラ」とか、可愛い名前が記されています。各家庭で可愛がられている犬達はトリミングサロンに出される事も多く、トリミングされることにも慣れていますからカットもしやすいです。なにより、愛されている犬達は目が違う、キラキラしてて、楽しそう。
これに対して、不思議な一軍の犬達がいます。ブリーダーの元から借りて来られたプードル達です。手をつくしてプードル探しをした結果、近所にプロのブリーダーが居たのでしょう。ブリーダーなら沢山犬がいて当たり前。そういう所からは一度に7〜8頭、ドっと借りて来る事ができます。
でも何かが違う、違うのです。ブリーダーの元で「子を産むだけ」の為に飼われている親犬達は、一般家庭で飼われている犬達の様に人に抱かれて可愛がられることがほとんどありません。だからまず台に乗せられるのがコワイ。生徒達に触られるのがコワイ。ハサミがコワイ。人がいっぱい居てコワイ。とにかくコワくて恐ろしくて、変に動いたり鳴いたり、震えたりしています。
何よりショックだったのは、テーブルの脇に記された名前です。そこにはこういう数字がかいてありました。「田中A-1」「田中B-3」そう、運ばれて来たゲージの記号と、何匹目だったかの数字のみ、、。この子達には可愛がられる為の名前も付いていないのです。
もちろんブリーダーにも、キチンと親犬達に名前をつけて可愛がっている方もいます。でもこの田中ブリーダーの様に、名もないまま飼っている方も居る。。。これがプードルブームの去った後の業界の現実。
アナタのワンコ、目は輝いてますか?ちゃんと名前を呼んであげてますか?