親戚が飼っていた16歳の柴犬が先日亡くなりました。
脱走などしたことのなかった「彼女」でしたが、最期の時を知ったのでしょう、飼主の隙を見て逃げ出し、遠い所で見つかった時には既に冷たくなっていました。
日本犬は死ぬ時に姿を消すとは昔から良く言うことですが、マンション住まいで1年中ソファにくつろぐグウタラ柴犬も増えている現代において、まだこのような「日本犬らしい」犬が厳然と存在することにある種の感慨を覚えます。
柴犬や秋田犬は今でも根強いファンをもつ、日本古来の犬種です。日本犬を好む人と洋犬が好きな人はもともとタイプが違いますね。「柴犬を飼う人は代々柴犬を飼い続ける」とよく言うのですが、経験からして真実だと思います。
シーズーを飼う人は、次の代はマルチーズになったりその次にはプードルを飼ってみたり、と犬種を変えることもよくありますが、柴犬や秋田犬のファンはずっとその犬一筋の方が多いです。忠誠心のある犬が好きな人は自分も忠誠心があるということなのでしょうか(笑)
かつてお客様に渡す前の秋田犬の子犬を1週間あずかったことがあります。凛々しいお顔にも惚れ惚れしましたが、なによりその佇まいに惹かれました。部屋に放して机仕事をしていると、普通の子犬なら足元に来てこちらの足に身体を寄せて寝てしまうことが多いのですが「彼」はくっついてくることはなく、50センチ離れた所でコチラに向かって伏せをしてウツラウツラしているのでした。生後50日のあどけない顔なのにその背中にサムライを感じました。
またある別の柴犬の子犬は、お客様のおうちにお届けしてから一向にオシッコをせず大変心配したのですが、ベランダの戸をあけたとたん外に飛び出して行き、一番遠くのコンクリートの上でやっと用を足しました。「彼女」は家族が寝床の近くにおいたプラスチックのトイレになど見向きもせず、ずっとベランダの外で用を足し、一度も家の中でソソウをせずに育ちました。
このような日本犬の神経質さや忠誠心は大変な美徳であり魅力なのですが、一歩間違えると悲しい現実を呼ぶこともあります。
忠犬ハチ公がもしラブラドールレトリバーだったら、3日であきらめて家に戻り他の家族と幸せに元気に暮らしたことでしょう。
意外に知られていませんが、最近多いのは1人身の高齢者が忠誠心の高い日本犬を飼っていて先に飼主が亡くなってしまうケースです。この場合どんなに周りが手をつくしてもまったく懐いてくれず、引き取り手のないまま最終的に保健所へ、、という悲劇的なケースもあるのです。こうなると行き過ぎた忠誠心も考えもの、むしろ少しくらいオバカさんの方が幸せに暮らせることもあるのかもしれませんね。
あなたの愛犬、あなた以外の方にも笑顔を見せていますか?
自分の言うことだけをきくワンコというのは本当に愛しいものですが、もしあなたが「帰って来れなかった時」に彼が幸せに暮らせるのかどうか、考えておくのも飼主のつとめかもしれません。