映画にもなった秋田犬(の雑種?)の「わさお」は皆さんもご存知でしょう。フサフサした被毛に小さな目、あのブサイクさが(失礼!)可愛いと話題になりましたね。
インターネットのサイトで調べてみると「わさお」は秋田犬(長毛種)などと紹介されています。え?あれ秋田犬なの?雑種でしょ?と思われた方も多いのではないでしょうか。
秋田犬と言えば皆さんすぐにキリっとした「柴犬の大きい形の犬」を想像するはず。あんなフサフサしているワケがないと思いますよね。
実はわさおの様な毛質の秋田犬は意外に生まれてくるのです。この子たちはとても「ビミョ〜」な存在です。業界ではあのタイプの秋田犬を「ムク毛」と呼んでいます。ムク毛の秋田犬は本来は「ホンモノの秋田犬」とは認められません。いってみれば「みにくい秋田犬の子」。
秋田犬は由緒正しい?犬種で独自の犬種保存会もあり、秋田犬であるための色々な基準が厳しく決まっています。これは犬種標準(ドッグスタンダード)といってどの犬種にもある規定なのですが、犬種によって厳しかったり甘々だったりするのが興味深い所。もちろん、高い理想をもち犬種の「本来の姿」を追求している犬種団体ほど、その選別は当然細かく厳しくなるわけです。
これはあまり大声で言えない話ですが、私が以前話をきいた秋田犬のブリーダーの場合、ムク毛の子犬や本来秋田犬とは見なされない毛色の子犬が生まれてきた場合は「生まれてこなかったことにする」ということでした。ギョっとするかもしれませんが、標準にあった理想の犬種を作り上げていくということは、つまりはソウイウことでもあるのです。もちろん、全てのブリーダーがそうであるというわけではありませんが、、、。
もちろん、それを忍びないと思うブリーダーもいます、そんな時は「秋田犬としてではなく」流通にのることがあります。流通する時の値段は他の「マトモな」秋田犬とは比べ物にならないほど安く、可哀想になってしまうほど。時には「タダで良いから誰か貰って」のレベルです。
写真の犬は私がある時に縁があって購入し親戚が飼っている「純粋なる」ムク毛の秋田犬ですが、引き取る時の条件は「血統書は出さないからね」で価格は「送料として5000円」でした。引き取った日、あまりの可愛いさに抱っこしながら「生まれてこなかった事にされなくて良かったね」とシミジミ思ったのを覚えています。
「犬種」は世界に数百あると言われています。FCIの公認以外にも、日本に秋田犬や紀州犬や北海道犬がいるように、それぞれの国の風土に根ざした沢山の犬種が居て、独自の文化のなかで独自の進化を経て、存在しているわけです。「犬種」はそれぞれの犬の特性を生かし、犬と幅広い分野で共存しようとしてきた人類の知恵の賜物であり、努力の成果であると言えます。しかしその一方で「純血種」というものが存在するということは、人間の決めた基準に合うか合わないかで、その子犬の価値と生涯が決まるということでもあるわけです。
この脈々と受け継がれてきた犬文化の持つ合理性と理不尽さは、世界のペット業界に厳然と存在する大きな課題であると言えるでしょう。
貴方の飼っている可愛い秋田犬の毛が、ある日突然フサフサしてきたら、どうしますか?