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特別コラム

原田コラム(45)繁殖犬惜譲にご用心

我が家は常に犬を飼育しており、何回かの犬のお産の経験もありますので、老後は犬の繁殖で生計を立てたいと考えておりました。
おりも折り、愛犬雑誌で「繁殖犬惜譲」と言う記事を読み2〜3才の牝犬を6頭買い入れました。
1頭が体調をくずし、獣医さんに見てもらったところ「どう見ても6〜7才だよ。」と言われました。
先方に返したいと電話したところ、「他の人が何十万で買うと言ってたのをあなたに売ったのだからその差額を払えば引き取る。」と訳のわからぬ応対です。
血統書は2〜3才のものが4枚来ており、2枚が未着です。
だまされたのだとしたら悔しくてなりません。

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残念ながら、だまされたのだと思います。
犬の繁殖がらみで被害者にならないための心得をいくつか挙げようと思います。

1、この先、稼いでくれる事が確実な牝犬を他人に「惜譲」する事などあり得ないと考えるべきです。
本当に「惜譲」だとしたら、繁殖者のまわりにはそれなりの人脈がありますから、仲間が競って引き取るはずです。
雑誌の広告にお金を払ってまで他人を捜すのは変だと思いませんか?
繁殖事業は産み始めるまでが大変なのです。
知人に4万羽を飼育する養鶏場の経営者がいますが、毎日4万個の卵を産むのか?と聞いて笑われた事があります。
「半分はまだ産まない」と言うのが答えでした。
繁殖犬は子犬から順当に育て上げるのが当然で、繁殖には近道や裏わざはありません。

2、熱心に勧められる繁殖はやめた方が良い。
勧めてくれる人があなたの幸せを考えるのが当然の人なら別ですが、犬の繁殖では一般に、勧める人の方が幸せになるケースが多いのです。
つまり、繁殖を始める際の種犬を高く売るケースです。
筆者は繁殖についての講演で地方に出向く機会が多かったのですが、九州南部の県では多くの人が色々なもの(犬とは限らない)の繁殖でだまされた経験をもっており、不信感を取り除くのに時間を要しました。

3、出産子犬の「買い取り約束」には慎重に。
繁殖を始める当初は、誰かが子犬の買い取り保証をしてくれる事は「有利なこと」と考えがちですが、では、その人は買い取った子犬をどうするでしょう。
ペットブームといわれる昨今は売り手市場で、人気犬種の子犬が売れ残る事は考えられません。
こういう時期の買い取り契約は誰に有利でしょうか?
仮りに、業界で子犬が余る状態になった時でも買い取りの約束は守られるでしょうか?
子犬の流通の仕組みとこの業界の慣習について充分な知識を持たれるようお勧めします。