弊社には閉鎖した工場がいくつかあります。
この工場の跡地利用について、社内でアイデアを募り、研究したところ、最終的な候補として「犬の繁殖業」が残りました。
さて社内にはたくさんの愛犬家がおり、社長も犬好きで、大方の流れがGOとなり、可能な限りの情報を入手して着手することになりましたが、会議の席上、社員の一人が「産まなくなった犬はどうなるんや?」と言い出しました。
しばらく沈黙の後。
「始める前でよかったな。・・」と社長が言い、繁殖の話は立ち消えになっています。
社長の最後の一言「みんなどうしとるんやろ?」がそのまま今回の相談です。
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事業規模での子犬の繁殖が、あまり見られない理由もここにあると思います。
利益効率だけを追求した場合には、子犬の繁殖はおそらく他の生体を扱うほとんどの事業をしのぐ試算が成り立つでしょう。
で、ご想像の通り、今回の問いに対する「なるほど」と言う答えはありません。
多くのブリーダーが今まで、どうして来たかをご紹介するにとどめます。
1、最期まで飼う。
犬の繁殖は、養鶏や畜産業界など「食べる」事が前提の動物飼育と同列に考えることができません。
最もあたりまえで、根本的な考え方が「最期まで飼う」方法でしょう。
小規模な繁殖家(愛犬家)はごく普通にこの事を行なっています。
事業規模でこの方法を実行するとなると、平均的な犬の一生の内、出産可能な年月は約半分ですから、当初の試算の次の部分を2倍に計算する必要があります。
餌料費用、設備の広さ、人件費。
2、地域のミニコミ紙などで「・・譲ります」などの広告を見かける事があります。
もちろん「・・譲ります」の広告がすべてではないのですが、繁殖犬としてピークを過ぎた犬を無償で譲る方法です。
筆者はこの方法の是非を論ずる立場にありませんが、この方法での成犬の譲渡では、譲り受ける側に、重大な「覚悟」が必要です。
多くの場合、これらの犬(繁殖犬)には基本的な「しつけ」がなされておらず、一般家庭に迎え入れるには、相当な忍耐と包容力が要求される事はご想像通りです。
悲しい事に、一度手放された犬は、二度目は平気で手放される事が多く「かわいがってもらえる」ケースがどの位あるのか疑問でもあります。
ともかくこの方法は、企業として繁殖に参入する場合に通用する方法とは考えられません。
3、ご相談の会社の会議は、社長さんの言葉で終わったようですが、その先もさらに会議を続けた会社がありました。
「産まなくなった犬は?」の疑問に対し、会議に出席していたXさんが「自分で飼育コストを稼がせよう」と提案したのです。
これが犬の動物園の発端です。(すべてではありません)
結果として動物園の入場料収入が飼育コストを賄ったばかりでなく、人間のコストまで稼いでいるのは皆様ご存じのとおりです。