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特別コラム

原田コラム(28)訓練とトレーニング

最近、犬の「訓練」に代わり、「トレーニング」と言う言葉が使われる事が多くなった気がしますが・・。

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年配者は犬の「訓練」と言うと、シェパード犬が訓練士の腕に咬み付いたり、カバンの上にかぶさって威嚇する様子を想像してしまいます。
襲撃や追跡、威嚇など、いわゆる我が国の警察犬訓練の手法は軍用犬の訓練の延長上にあるもので、ヨーロッパのトレーナーが「日本では今でもヒトラー式の犬の訓練をしている」と発言する事すらあります。
近年の愛犬家がカバンを守るために犬を飼育しているとは考えられず、我が国在来の「訓練」業界も方向転換を余儀なくされました。
警察犬訓練所の名称のままで、「イギリス式家庭犬トレーニング」を行うと言う広告も見かけます。

近年、我が国にも浸透しつつある「家庭犬トレーニング」とは、犬が人間社会と共生するために必要な基本的なマナーを習得させるもので、「飼い主が自分の犬をコントロールできる事」が主たるテーマです。
さらに「家庭犬トレーニング」のあり方として、「飼い主自身によるトレーニング」が推奨されています。
つまり「家庭犬トレーニング」の技法は飼い主が習得すべきもの、との考え方です。
実際、イギリスでは犬のトレーニングは社会的事業として全国共通のカリキュラムで運営されていますが、生徒の犬は必ず飼い主と共に出席し、犬よりも飼い主が真剣に学んでいます。
会場で飼い主を指導するトレーナー(通常はボランティア)が直接、犬に指示を与える事はありません。
犬と飼い主は習得レベルにより進級し、最終段階でテストを受け、合格すれば「グッドシチズン」の認定を受ける事ができます。

日本でも「犬にも義務教育が必要」とのかけ声は聞こえますが、ビジネスとして成り立ちにくいヨーロッパの「家庭犬トレーニング」のシステムが民間主導で普及する事はむずかしいでしょう。
ならば公共団体はどうかと言うと、乗り気ではありません。
かつて犬猫の避妊手術費用の助成をした自治体が「本来飼い主が負担すべき費用に税金を使うな・・。」との反対にあい中止した事もありました。
我が国ではまだ当分、犬とすれ違う時は臨戦態勢で身構えるしかありません。

開発途上国で最初に売れる犬は、シェパード犬です。
民主化、改革、開放、で財をなした金持ちの財産や屋敷を守るために多くの「訓練」済みシェパード犬がこれらの国の空港に到着しています。
庶民の家には、まだまだチワワの居場所すらありません。