出産子犬の出荷先について、有利に売れる方法から順に教えて下さい。
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犬の繁殖業が養豚などの畜産業と最も異なる点が出荷の問題です。
畜産業では1業者が大量の出荷をしても市場価格が変動する事はないでしょうし、国の政策で値段の下限が保証されたりしています。
ペット業界では、余程の人脈に恵まれていない限り、同一種の子犬を多数出荷しようとすると値を下げてしまう事になります。
犬のセリ市場でも、同一種の子犬の出荷が多いと買い手は強気になって値を付けず、最後の方で安く買おうとします。
犬の繁殖と言う仕事は、交配から離乳までをうまくこなすだけでは不充分で、子犬を売る段階でも技術を要するのです。
「有利に売れる方法から順に」というご希望ですが、下に行くほど有利になると思います。
1.セリ市場で売る。
私的に運営されるものですが、全国に何ヵ所かの子犬、猫のセリ市場があります。
いくらかの入会金を払い会員になる必要があります。
一般に言える事ですが、セリは市場への到着順に行われるので荷主は早く会場に着く事が必要です。
いわゆる「おなかいっぱい」の状況になると買い手が値を付けないからです。
売却金は5%程度(セリ市場の利益)を差し引いて、数日から1週間後に支払われるのが普通です。
値を決めるのは買い手ですから、出荷者にとっては不本意な結果になる事も多く、初心者にとっては最後の出荷手段と考えるべきでしょう。
2.買い取り契約。
ペットショップを多店展開しているような相手の場合には「すべて買い取る」と言う提案をしてくるケースがあります。
ショップ側から見ると専属繁殖場と言う訳です。
繁殖者は売り先を見つける苦労からはまぬがれる訳ですが、先方の「すべて買う」メリットは何かと言うと「安い」と言う事ですから良い事ばかりではありません。
この約束は繁殖者側から解除できる内容なら良いのですが「台犬を買い手側が供給する」ような仕組みの場合は繁殖者側が弱い立場にあるようです。
血統書を買い手側が管理する例も多く、勝手に売る事ができないような仕組みになっています。
特定の犬種の値段が高騰し、売り手市場になった時には悔しい思いをしますが、逆に暴落した時でも買い取りが保証される(?)ので、飼育頭数の多い時には考慮すべき方法です。
3.情報センターを利用する。
「日本ペット情報センター」と言う組織があって、全国の子犬、猫の出産情報をペットショップなどに配信しています。
情報センター活用の利点は、出産直後から登録できる点です。
離乳時には子犬の行き先が決まっていると言うケースが多いものです。
情報を受信していれば、全国の卸し相場も分かります。
情報センターでは一般的にセリ市場より高く売れるようですが、特に特種な犬種は情報センターでの売却が有利です。
ほとんどが空輸になりますから、空港での発送手続きに慣れる必要があります。
余程信用できる相手でない限り、入金を確認してから子犬を発送するなど金銭トラブルを避けるための注意が必要です。
4.やっぱり直売
お勧めしたいのはやはり直売です。
値段の点ではもちろん、愛情込めて育てた子犬のためにも最も良いからです。
この業界は、売れるまでに3割死ぬと言われて来ました。
ペットショップの陳列に元気な子犬を10頭並べるためには、隔離された部屋で3頭を看病する。と言うような事がまじめに言われて来ました。
こう言う事態を見込んで小売り値段は付けられているのです。
インターネットの普及は繁殖者による子犬の直販にきわめて好都合です。
繁殖者が他の出荷方法よりも高く売ったとしても、消費者はショップで買うよりずいぶん安く買えるなんて、まさしく革命です。
出産直後からデジカメで写真を撮り、ホームページで全国の愛犬家に見てもらいます。
自分でホームページを公開しなくても、こう言う活動を助けるサイトもあります。
インターネットのおかげでペットビジネスに関する限り日本中「地域格差」はなくなりました。
近くに空港さえあれば、子犬の繁殖で生計を立てる事は充分可能です。